阿呆鳥
あおば

        160626

アホウドリの羽根を求めて太平洋の諸島を巡る
次々と発見された、人を知らぬ海鳥たちは
簡単に捕らえられ棍棒で殴り殺され羽を毟られ
卵や肉は食べられたり肥料にもされたが主目的は羽毛であった
羽布団用の羽毛は西洋に輸出された
明治の初め、貴重な外貨を稼ぐ重要な産業としても注目され
出来高払いで稼げば稼ぐほど大金が手にはいる
一攫千金の夢が適うと群がる出稼ぎの男女を乗せた舟が
次々と鳥の群生する孤島に捕獲人として置いてゆく
彼等は粗末な小屋を建て、せっせと羽毛製造に精を出す
補給舟が時々やってきては食料と引き替えに羽毛を積んで出て行く
だけど食料その他の必需品は置いていかないこともあり
残された人々が飢え死にする、おきざりす事件も頻繁に起こり
明治の代の人の命は羽毛のように軽かったようだ
首謀者は人の命と鳥の命と引き替えに大金を手にして
名士として待遇され東京の一等地に豪勢な屋敷を建てたりして
その名を今に残している
尖閣諸島にもスプラトリー諸島(南沙諸島)まで出かけて
夢を現実にしたりしようと危険をも厭わない夢を追う意欲は
どこから生じたのであろうか
士農工商の身分制度がなくなり、武士も職業変えを要求され
長い鎖国の後に生じた人口爆発現象もその一つの原因かも知れない
とばっちりを食わされたのは信天翁をだけでなくありとあらゆる
美しい鳥の羽が淑女の帽子の羽根飾りとして流行したのだから
武蔵野からも鳥がいなくなったったと嘆かれるほどで
鳥には受難の時代だったのだ
人は美に対しては何者にも遠慮会釈しない
美しく生まれたのが不運と言うしかないと
害鳥として迫害される雀たちも同情するほどだ
大海原を悠々と飛翔する大型の海鳥を君は見たことありますか
残念だけど、絶滅してしまったよと思われていた彼等は
鳥島他での賢明な繁殖活動の結果、かなり数を増しているがまだ油断は出来ない
他の生物の種を絶滅させて、今の繁栄を勝ち取った人類の本能を忘れてはならない
君も僕も同種だからね、油断するなよ
だけど、
僕には彼らを見る機会はありそうもないのでチャールズ・ラムの友人のサミュエル・テイラー・コールリッジの長編詩「アルバトロス」[注]を読むしかなさそうだ
そして、
アーメン、アッラーフアクバル、南妙法蓮華経、南無阿弥陀仏、南無大師遍照金剛、南無釈迦牟尼仏、その他なんでも良いから
神を讃えよ、人を讃えよ、生きとし生きるものあらゆるものを讃えよと
翼を拡げ世界の海を悠々と飛んでいるみたいだね




アロバトロス
The Rime of the Ancient Mariner (text of 1834)
By Samuel Taylor Coleridge
http://www.poetryfoundation.org/poems-and-poets/poems/detail/43997


自由詩 阿呆鳥 Copyright あおば 2016-06-26 23:13:10
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