イワナ アユ
あおば

        160619
雨を排出して
街の個性を潰すアユ
雨を貯め込んで日照りに備える
イワナ
貧乏な車が田圃に転落して
運転者は打撲傷で済んだが
後部座席でシートベルトを無視していた
イワナの妹は哀れ頭部陥没骨折で死亡
土壌を血で汚したと陰口叩かれ
泥鰌が食べられなくなったとも言われ
立つ瀬が無い状況をアユは面白がって
水底の大石を自分の縄張りとした
アユカケがやって来て石と化した
チャンスは作るものだと釣り人がほざく
囮の鮎を岩の近くに泳がせて
アユを誘うが
下手くそなのでまだ一尾も釣れない
釣果ゼロは願い下げと囮を換えるが
アユは上目遣いにそれを見ている
30分後に雨が降ってきた
釣り人は諦めて帰途に着いた
危険が去って安堵したアユが
のんびり苔を食いだした途端
アユカケが跳び付いてアユを捕らえる
油断大敵田圃にタニシ
泥鰌すくいは道化の役目
悄然としたイワナは、魚道を一気に跳び越えて
いつもの源流を目指す
今夏は断水になりそうだから
貯め込んだ水で過ごすかもしれないなと
貧乏な車を廃車にして身ひとつで古里に戻る
猫の出る場は無かったのでリモコンを踏んづけ
電源オフにして、天井裏のネズミが部屋に降りてくるのを
真っ暗な部屋の隅で石になったようにじっと蹲る
彼女は黒猫だから、目を凝らしても見えないのさ



初出「即興ゴルコンダ(仮)」を僅か訂正
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、さわ田マヨネさん





自由詩 イワナ アユ Copyright あおば 2016-06-19 23:54:41
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