遊泳禁止区域
佐々宝砂

白い波に足をひたして
海に走り込もうとするこどもをつかまえる

波に洗われる砂のうえ
何かの記念の石碑みたいに
ぽつんと残される丸い石

背の立たない輝く水に浮かび
ようやく息を継ぎながら
ずんずん遠くなる岸をみていた
あの記憶は
まだふくらはぎのあたりに残っている

誰が招くのか
何が招くのか

遊泳禁止区域の看板の下
忘れられたまんまのサンダル
干からびたカジメ
へこんだペットボトル
ツメタガイが穴を開けた二枚貝

さほど美しくもない砂浜で
わたしたちは確かに何者かに

招かれていることを悟りながら
わたしはやっぱり
海に走り込もうとするこどもをつかまえる


自由詩 遊泳禁止区域 Copyright 佐々宝砂 2016-06-14 09:02:57
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