ひやけしたシロクマ
あおば

            160522

日焼けしましたねぇと
大貫妙子は誰かに決め付けられ
慌てて南極に行ったとかなんとか(嘘でしょう)
なにしろ日焼けには逆療法が効くのですと
北極から南極へとぞろぞろ難民船に掴まり
シロクマたちは移動する
途中の食料は、こぼれ落ちた者たちを食べればよい
この際モラルがどうのと気にしている余裕は無いのだ
シロクマがクロクマになったら商品価値も無くなるから
国際世論も見て見ぬふり
動物愛護協会も難民の命よりもシロクマの命の方が尊いと
しらん振り
中には鮭缶を空輸してシロクマに与える者たちも居て
難民達は腹を空かして目を閉じる
そろそろ昼食の準備だと、衰えた者から突き落とされて
シロクマの後ろにはいつもなにかがおこぼれを拾おうと
群れなしてついて行く
放射状にさざ波が立ち、襤褸船が南氷洋に近づいた頃合いだが
そろそろお粥も炊きあがったはずだと私は
かつお節の準備に余念が無い


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、阿ト理恵さん






自由詩 ひやけしたシロクマ Copyright あおば 2016-05-22 15:55:36縦
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