発条式発泡詩 <1>
nonya


「思春期」


疎ましく膨らんで
悩ましく弾けて
狂おしく奔って
暑苦しく押し黙って

思春期なのか
四月は変拍子

狼狽える前髪で
躊躇う指先で
彷徨う吐息で
蹌踉めく鼓動で

乗り切れたなら
光と風の五月




「誕生日」


ハッピーバースデー
滑らかな自動走行で
三途の川の河川敷に
また1マイル近づく

ハンドルは肘掛と化し
アクセルは踏み方を忘れ
あんなに抗っていたブレーキには
もはや足も届かない

それでも
ケーキを頬張る頃には
ほのかに嬉しくなる
ハッピーバースデー




「土曜日の春」


敷き詰められた
コットンの空から
歓声を上げながら
雀が零れ落ちてくる

切り揃えられた
赤目垣の結界を
すり抜けて来るのは
程好い温度の鼻唄

旋回するヘリコプターの
執拗なつぶやきを
左耳で聞き流しながら

滲んだ市街図の端で
私はゆったりと錆びていく






自由詩 発条式発泡詩 <1> Copyright nonya 2016-04-09 10:23:15
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