落花
藤原絵理子


風にはぐれた椿一輪 川の流れを漂う
冬の終わりに 寄る辺なく揺られて
春咲く花は霞を湧かせて 華やかに
あたしは きみの笑顔を思い出せなくなった


寒さに耐えて 守っていたものは
ぬるむ水の霞に 薄らいで消えた
張りつめていた不安は はぐらかされて
わかったような顔の 仮面の下に


心の底に 黒い炎を隠して
満開の花に微笑みかける
妬みと嫌悪を ひととき誤魔化して


季節はうつろいゆく
誰も皆 落ちた椿のことなど忘れ去る
気がつくと 自分より不幸な人ばかり探している


自由詩 落花 Copyright 藤原絵理子 2016-04-07 00:47:27
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