はかないで
ただのみきや

蛇はひと口咬んで
あとは丸呑み
四の五の言わず呑み込んで
ゆっくりと消化する

蜘蛛は牙でひと刺し
注射して中身を溶かす
あとはハンモックで横になり
ゆっくりストロー

蛆は胃液を吐く
死肉を蕩かし粥にして
頭を皿に沈める成長したくて
まあ食べること食べること

人はしっかり噛んで
よく咀嚼しなければならない
固いものだって噛めば噛むほど
味がわかってくると言うもの

牛にはかなわない
反芻し再び噛みしめより深く納め
その乳は他人だって養えるし
死んでも残せる糧がある

こっちは儘ならず
養ってくれた糧ほども
美味くて滋養のあるものなんて
振舞おうにも残そうにも


翼を切られたオウムが誰かの
滋味のある声色を真似ている
お喋りは的もなく散らされて
鳥は壊れたラジオになった
ぴーぴーがーがー
もとの声音はどこへやら




            《はかないで:2016年4月6日》








自由詩 はかないで Copyright ただのみきや 2016-04-06 20:42:37縦
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