手と手
凛々椿

春か冬かと疑う


まだぬくもりが指先にかからない
冷たさのはざまの或る一夜に
目覚めの雨は降る
膨張した外気温は子が急に大人になったよう
草花は気づきの艶をほんの少し
枯れ葉のうちから覗かせた


どうにかしたいと思ったことは嘘ではありません
でも
月は靄の向こうに思いを滲ませている
花など知らぬ
そう言い張って


ひかりはいずれ空に濡れ
葉のしずくは涙を歌いながら根に沁み
生き生きと伸び
思い思いに吼えるでしょう
春を一足飛びで越えてゆく その声はとても美しいのです
例え発せられなくとも
かき消されても
木々青く
花は華やかに
すべてはとてもまぶしく愛おしく変わってゆく
君には強すぎるのかな


さあ 早くお風呂に入りなさい
あしたはまた寒いといいますから


冬じまいの或る一夜は
春の向こうをたぐりよせるただ一度限りの夜
心亡くとも春は来ますから
待ちましょう
ほら 
こちらにおいで
そんなに駄々をこねないの
僕はここにいますから





自由詩 手と手 Copyright 凛々椿 2016-04-05 20:45:35
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