途中経過
山田せばすちゃん
1 一 一つだけわがまま聞いてくれるなら曲馬団には売り飛ばさないで
2 二 二人ともそれぞれに夢を見て眠るとてもよく似た夢ではあるけど
3 四 鶴亀算宿題ならばよくお聞き、坊やよ亀の足は四本
4 七 小雪舞う伏見稲荷の沿道の七味唐辛子のような侘しさ
5 ぬいぐるみ ぬいぐるみのほつれた背よりはみ出せるパンヤの黄色が燻んでゐるよ
6 柊 家々の軒先飾る柊と鰯の首より血のしたたりつ
7 一葉 この件にいつか質問する暇与えず死ねり伊藤一葉
8 横浜 赤い靴履いた少女は片っぽを横浜港に忘れています
9 六本木 六本木アマンド前を右折する車線がわからず泣き濡れてをり
10 教授 名画座で「個人教授」を見るような例えばそんなデートをしないか?
11 ラムネ 汽車を追いプラットホームを駆けた後の火照りし頬に冷えたラムネを
12 ライブ 酔っ払いの戯言を聞く車座をトークライブと言われたる夜
13 閣 内閣は総辞職します!火星人の行方を見失った責任で
14 ゴミ 捨てればゴミ拾ってもゴミ貯めこんで何年たってもゴミだってばよ!
15 バカ 気がつけばバカボンのパパと同い年になっていたのだ四十一歳
16 痛 痛いのが好きではないの痛いことをされてるときのあたしが好きなの
17 痒 傷跡が痒くなるのはもう一度掻き毟られて傷となるため
18 麻酔 五つより先を数えたこともなし「君はほんとに麻酔が効くねえ(笑)」
19 覚醒 覚醒剤やめますかそれとも人間をやめられるならやめてもいいですか?
20 薬 薬師丸ひろ子よ唄へ高らかに「セーラー服と一晩中」を
21 陽 ポケットにサイコロそっと忍ばせてかそけき声で唄ふ「落陽」
22 真 美しき真空管を見に行かむ秋葉原駅そばラジオ会館
23 食 ちくわぶを食べる女がどこかしら幸薄そうに見えるのはなぜ?
24 古着 制服とブルマを古着屋に売ったお金で海に出かける二人
25 マジ クリスタルマジック三宮店の美樹ちゃんは父の顔を知らない
26 雪女 団欒の鍋つつきたる窓の外静かに笑ってゐる雪女
27 翼 失いし翼の名残とどめたる肩甲骨にくちづけをする
28 影 君が泣くまでの様子を高速度カメラで撮影する僕である
29 宿 花形と星と左門と伴宙太宿命のライバルの例として
30 幻 君だけに教えてあげる本当は僕は幻なんかじゃないんだ
31 漉 今の僕の欲望を具体化するために漉し餡一キロ買いに出かける
32 祈 寝る前に娘は神に祈ります「明日あのこが死にますように」
短歌
途中経過
Copyright
山田せばすちゃん
2005-02-23 11:00:26