白いサプリメント
そらの珊瑚


街はすみずみまで霧に覆われていた
平等に満ちている粒は
白いサプリメント

普段は透明が満ちていて
遠くまで見渡せた
海に点在する小さな島や
船が描いてゆく波のような道までも

いまはもう
めじるしになるものさえ
たしかめるすべがない
陽光さえ乱反射し
東はどちらなのかも

であったのかも
もはや、あやうい

てのひらに載せた錠剤が
薬なのか
毒なのか
不確かなまま飲めば
(飲まないという選択肢はなかったし、
 どちらにしても同じという気もした)
胃の中で音もなく溶け出し
血管という道を通って
拡散されてゆくだろう
わたしが東へ帰ろうとしていたことも
幻想のたぐいであったのかもしれない


自由詩 白いサプリメント Copyright そらの珊瑚 2016-03-09 09:05:22
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