少年の夜
Lucy

夜がすっかり明けて
なにもかも
とりかえしがつかなくなってから
あちらからもこちらからも心優しい人々が
花を抱えてやってきた
涙を流し祈りをささげた

いつもそうだ
愛されていた人が
悪魔みたいなやつに
むごたらしい殺され方をすると
こぞって悲しみを共有する
テレビの前でテレビの向こうで
胸を痛める
怒りに震える
まるでその純粋さゆえに
彼が犠牲になったかのように

少年は
誰にも助けてもらえない
本当に死んでしまうまで
事の重大さは気づかれない
殺されかけている彼を
誰も見つけない

彼が死んで初めて
人々の耳には届く
ああそういえば
そんな事を言っていた
ああそういえば
悪い子たちとつるんでいたけど
人懐こくて優しくて
誰にでも好かれるいい子だった
ああそういえば
学校へ行きたいと言っていた

騙されて
おびき出されたのだろうか
こんな夜遅く

少年の夜はついに明けない
そのきのどくな母親の
そのふがいない警官の
その経験の浅い教師の
そして小心で未熟で酒乱な殺人者の
悪夢も
終わることがない

草むらに揺れる
おびただしい花束が
テレビのこちら側と
あちら側で
何も学ばない人たちの痛みを
曖昧になだめて


自由詩 少年の夜 Copyright Lucy 2016-03-03 23:33:35縦
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