蜜柑をむく女
そらの珊瑚

蛇口が
みずうみにつながっているように
蜜柑は
五月の空へつながっている
かぐわしい白い花
まぶしい光に
雨だれに
ゆっくりと過ぎてゆく雲に

蜜柑をむくと
その皮は
しっとりと柔らかく
はなびらのかたちにひらいてみせる
ひらいてそうして
おしまいになる
果実を手放し
あとはあっけなく
ひからびてゆくだろう

わたしは
どこへつながっているのだろう
爪の先がかすかに香る
刹那の命

今週末
冬は気化され
春になる予報
そんなふうにすべての天気図が
理由もなく過ぎてゆくことを
恨んだりしない蜜柑が
ここにある


自由詩 蜜柑をむく女 Copyright そらの珊瑚 2016-03-02 12:38:20縦
notebook Home 戻る