春が立ちあがる音(ゴル投稿長考版)
高橋良幸

手を貸そうか、なんて
わたしが必要としていないのを知っていて言うんだ
1530円をレジで払おうとして
財布にない10円玉を探すふりをして
冷凍庫で乾いてしまったような伝言を
今更思い出した風に
それがあなたのセリフなのだから
仕様がないとでも言いたげに

途中まで行こうか、なんて
期待しているよりも早く帰ってしまうのに言うんだ
すれ違いと行き違いのちがいなんてどうでもいいのに
そんなことだけで会話したつもりで
だいたいわかってしまったことを
もう一度問いなおしたりして
聞き返した言葉を
あなたはウグイス嬢のようにうたう

そうなのだ
やっぱりそうなんだ
凍っているかもしれない道で
いつの間にかあなたは居なくなっていて
そうだと知っていたことに
だんだんイライラしてくる
まな板の上の成し遂げられなかったものたち
その代わりに何かをしなきゃ
わたしは悔しくて
自転車のまま
この坂道をのぼり切ってやる


自由詩 春が立ちあがる音(ゴル投稿長考版) Copyright 高橋良幸 2016-02-22 18:55:25
notebook Home 戻る  過去 未来