おとぎばなし
そらの珊瑚

火がないのに
いつでも
沸きたてのお湯が出てくる
昔、むかし
食卓の上に
魔法瓶という魔法があった

ただいまと
帰ってくる
冬のこどもたちのために
とても温かい飲み物が
瞬時に作られる
カップから生まれる湯気たちが
小さな顔のまわりで
ふわふわおどる
まるで
あそんで、あそんで、と
まとわりついてるみたいに

夜がやってくると
その魔法は静かに効力を失い

湯気たちは
水に

魔法瓶は
ただの瓶に

母は
くたびれた人間の女に戻った


自由詩 おとぎばなし Copyright そらの珊瑚 2016-01-28 09:44:54縦
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