天秤
藤原絵理子


越えられない 許されてもいない
つるんとした壁を 軽々とひと羽ばたきで
容鳥は笑顔で越えていく 見たこともない
世界へ 想像の中にしかない静かな森へ


平穏な壁の中は 灰色の焦燥に
氷に閉じ込められた魚の目がきらきらと
部屋の中には春が居座って あたたかく
身勝手な傍観者になる ぬくぬくと


天秤はひとつしかないはずなのに
別の世界を夢想しているうちに
天秤がもうひとつ 曇った夜空に現れる


心かき乱す 容鳥の羽音はそそのかす
根の生えた重い腰を 浮かせようと
囁きかける 穴を穿て その壁を壊せと


自由詩 天秤 Copyright 藤原絵理子 2016-01-27 22:47:14
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