「目をつむると」 ー歳を取るとはこういうことか(9)ー 
イナエ

目をつむると見えるものがあった

遠くの山頂に輝く光
道は途中で草むらに隠れ
どこまで続いているか見えないけれど
どこかに沢が有り
林間に小道が有り
小動物の通る道など
きっと到達するルートはある
無ければ
己の力で切り開くだけだ
そう意を決して上ってきた

今 目をつむっても見える物は
歩いてきた道
山腹の沢や沼
麓の都会の喧噪
光に照らし出されたステージ
丸い光の中に立っているわたし

今 目をつむって見える山には
岩壁の前に立つ孫たち

 なんと危なっかしいことだろう
 ここから見れば 
 先人たちの開き 舗装した林道が
 白いたすきのように山頂へ続いているのに

ああ 目をつむって見上げるものは
暗い岸壁をよじ登る孫たち


自由詩 「目をつむると」 ー歳を取るとはこういうことか(9)ー  Copyright イナエ 2016-01-25 10:12:24縦
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