冬の香
藤原絵理子


まだ蕾とも見えない 小さな突起の
春を待っていた梅の枝は 雪の重みに折れる
うららかな鳥の声を聞くこともなく
清冽な香を漂わせることもなく


淀みに映った空は 日に日に冷たく
緩やかに流れる水は 風景から色を奪う
川原に流れ着いた 赤いゴムまりは
少女が大人になった時 捨てられた ひしゃげて


失くして初めて知る 
あたりまえに持っていたもの
様々ながらくたや とりとめない夢 手の中に


灰色のモノトーンに際立つ 赤を置き去りにして
川も風も流れ去っていく 未来に向かって
こころは膨らむこともなく その赤に寄り添って震える


自由詩 冬の香 Copyright 藤原絵理子 2016-01-19 22:16:09
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