冬の池
藤原絵理子


風が悲しいため息をつく
かき曇った空に 葉を落とした大木の影黒く
烏が鳴く 惨めな輝きを目に宿して
閉ざした扉は 誰かが叩くのを待っている


開き果てた花薄は 干からびて
土の中で息づくものたちを羨む
澄んだ秋の夕照に華やいだ 記憶は薄れて
青い月の冷光に沈んでいく 色褪せて 暗い水底へ


うすっぺらい飾りを落とせば
身軽な白い骨になって うつぶせに
枯野の陰に横たわれるのに


冬の扉は 乾いた憂鬱を閉じ込めて
誰かが足跡を残すこともない 落葉の小径の奥
閉ざされたまま凍って 忘れ去られる


自由詩 冬の池 Copyright 藤原絵理子 2016-01-06 22:01:10
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