残照、ハンドクラップ!
みい

先生!
わたしは、といいかけてうっかり
チョークの粉でくしゃみ
冬を飛び越してしまった3回転半のジャンプで
着地、よろけて
目の前にひろがる もしくは
なにもひろがってなんかいない
残照、それわたしの
足場ね


追ったのは
確かに見えたからで
決していなかったわけ では
なかったと思う


踏んだかも
わたし踏んだかもしれない
あなたの影どころかせかいを








カフェにてスカッシュを溜め込む
しゅわわわっしゅか、のお腹は
ちゃんとはらんでいる

わたしごと
わたしの季節ごと


ケーキを食べた瞬間も
退屈なふりもできず かといって
うまく踊れもしなかった夜も
じゃあね、と手を振りながら
泣きわめいた朝も
愛してる人たちに笑いながら
愛してるよ!と叫んだ日も
わたしはいつも
手を、つないでいたかったの
誰かと
誰か、誰か、誰か、
という思いを
やっとのことで、にぎりしめて走るあし、
走るステップはなんで
いつまでもわたしらしいのか、それが
わたしにはもうずっとわからないで
泣いた、泣いた、涙が
流れてしまうのがもったいなくなって
上を向いて泣いた
それでもあふれてしまったもので
ぼんやり月がにじんでいく
わたしはまた
誰か誰か誰か、と言い
声にならないうち
月が、消えていくのを
みた

誰かなんてほんとうはひとりだ



それがあなたでよかったあ、と気づいたのは
意外にもたった今で
影を
踏まずにはいられなかった

あなたのわらったかお、残照。







ハンドクラップがきこえる。

ねこが、あたまをよこぎった。
もう見ないようにしようと思った。
女の子に、信じいよ、とやさしく言った。
自分にも試しに言ってみた。
こんなに聞き分けのない自分ははじめてだった。
まどのそとはくらい。
何万回目の夜なのにはじめてこわいと思った。
ねこをもう一度思いだした。
今度はちゃんと飲み込んだ。
アメリカンなショートヘアならお父さんが捨てた。



ハンドクラップがきこえる。

あなたの大きなからだと
わたしの小さなからだで
同じことを考えてみたい

追ったのは確かに見えたからで
決していなかったわけではなかったと思う
先生と見たゆうやけだけがちゃんとむらさきだったこと、
むらさきがきれいだとはじめておしえてくれたこと、
それからみんなでマフラーを巻き合ったこと、
あなたがわたしにわらってくれたこと。

ちゃんときこえる
ぜんぶ手がまばたきする



ハンドクラップがきこえる。


わたしの胸でねむるねこだって
なにかを飛び越す3回転半のジャンプ。










自由詩 残照、ハンドクラップ! Copyright みい 2005-02-19 22:20:25
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