夕焼け
藤原絵理子


キャベツを刻む 0.5mm できるだけ薄く
手間と時間がかかる 何のために?
きみが喜ぶ顔を見たいだけ ウソつきのあたし
なけなしの時間を使う理由があった


小さく手を振った 改札から流れ出る人波
少しうつむいて歩いてくるきみが 
あたしを見つけたときの顔が好きだった
必要とされている なんて思えた


さりげないフリをしていても 期待していた
気づいてくれなくても 自分を憐れんで
あたしの気遣いは あたしの中だけで回っている


せっかくの夕焼けが冴え渡るのに
ほの暗い蛍光灯の下で キャベツを刻んでいる
まだちゃんと さよならが言えてない


自由詩 夕焼け Copyright 藤原絵理子 2015-12-10 22:43:29
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