一億、総詩人社会
高橋良幸

*テープ起こし*

一億総ナントカ社会においては、一億人の集団意識をまず、切り刻まねばなりません
同調しすぎ、硬直するのが我が国の悪弊でありますから、近所のゴミ拾いでも人のメガネを拾わない、
どうせ俺の眼に合わないから拾わない、と宣言する、そういう市民であってほしいのであります
人の言葉を目にかけてから眼にかけないのは、詩人ぐらいのものであると、そう伺っております
(と、これはソーリがおっしゃったことですし、わたくしの意見ではございません)

我が国の社会におきましては、何の気なしに一億人がいつの間にか同じメガネをかけております
一般的なメガネ店と異なりまして、詩人は詩をひとりで作るわけでありますが、
ピントを合わせて作るのが、どなたの世界が見えるようになるのかということにおいてはですね、
いずれにせよ「度を、合わせてください!」などと言われて何度もレンズを調整をしておりますと、
それが良いことなのか悪いことなのか、混乱してきた、というのが詩人ではないかと思うに至るのであります
(と、これもソーリのおっしゃったことで、いまさら混乱と言われてもわたくしも困ります)

混乱しては困りますので、そこを分かり合えたことにして同じメガネをかけてしまえばですね、
右、左にかかわらずどの詩人も、憲法第9条がどういうレトリックなのかにつきましても、
口をつぐんでいるわけでありまして、【速記止まる】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そこのあなた!法律にレトリックもクソもあるかと思ったあなた!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あなた詩人の才能がありますよ!(法律家の才能あるとしても黙っておく)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あなたの言葉は法律ではないので、詩に向いてますよ!
(確かソーリにとっては本音と建前の最高規範でしたよね、その場合隠喩ですかね)

先ほどは失礼いたしました、不適切に受け取られる言葉があったと、そう理解しております
その点においては、わたくしの不徳のいたすところであったと、こう認識しております
論点を戻しますと、この場合メガネのですね、屈折率が世界の見え方を決めているわけでございまして、
詩人においては読み方自体が屈折しているものですから、【速記再び止まる】
・・・えー、いえ、屈折しているというのは、貶めようなどという意図は全くございませんでして、
変化に富んでいて素晴らしいということを屈折率に絡めて申し上げたかったものですから、
(ソーリ、ソーリ、もう時間をずいぶんとっています、無駄に長いと揶揄されてしまいます)

一億総詩人社会ならば、わたくしも同調と硬直を気にせず安心して寝られる、こう確信するわけであります
安心してポエムも読めるし、安心してシュプレヒコールも聞いていられる、
一億とくくられながらも、ばらばらでいられるのは詩人ぐらいのものと聞いておりますゆえ、
反戦の詩など戦時には役に立ちませんから<ヤジで聞こえず>詩人が!詩人がですね、
詩人が詩作品で詩人を増やしていく、これからの我が国を、かような社会にしていきたいと、
そう思うわけでありまして、ここに、一億総詩人社会を、提言するに至ったわけであります

(トーベン終わり)


自由詩 一億、総詩人社会 Copyright 高橋良幸 2015-12-10 18:47:27
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