グルタミン酸
藤原絵理子


きれいな人が 大きな昆布の束を抱えて
ピアスの石が イルミネーションに煌く
街のざわめきの中で 抱えなおした昆布の音が
雪が舞っている 北の海の潮騒に重なる


あたしは帰りに寄ったスーパーで
真っ白い 京都のお豆腐を買う
お湯の中で広がった昆布の上に
たぷんと 浮かんだ湯豆腐を想像して


淋しげな瞳は 
ビルの明かりを映しながら 
暗い海を見ている 少女の頃の記憶


無頓着に 昆布は白い粉をふいて
ウィーンの宮殿で見た ドレープに変身する
マリー・アントワネットの ドレスの裾に


自由詩 グルタミン酸 Copyright 藤原絵理子 2015-12-02 21:58:01
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