雪雲
千波 一也



雪をふらせる雲を
「ゆきぐも」と呼ぶのだ、と
あなたに教えられて
それが
すっかり
気に入ったので
つい独り言してしまう
「あれは雪雲だろうか」と
冬をうつした窓辺で

わたしがすきだったのは
あなたの教え方だった
「ゆきぐも」の響きもいいけれど
それをすきになったのは
いつだったか
どうしてだったか
覚えていない
あなたの
雪をふらせそうな体温なら
ようやく忘れかけた
近ごろだけれど

あなたがついた
真摯な嘘に息づく季節に
ほんとうの季節に抵抗するように
わたしは
呼んでいる
雪雲を呼んでいる

もう、
後悔さえもまとえずに
ただ呼んでいる






自由詩 雪雲 Copyright 千波 一也 2015-11-30 21:59:53
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