君の心の中のスナフキン
itukamitaniji

君の心の中のスナフキン

最近のロックンロールは もう終わってるわって言って
彼女はいつまでも 古ぼけた時代遅れのCDを回し続ける
その間にも 砂時計の砂はどんどん覆い被さっていって
何とか埋もれないように 必死で掘り返し続けている

君の心の中のスナフキンは言う

君のためだけに 歌われた歌なんて
君のためだけに 紡がれた詞なんて
そもそも最初っから そんなものなかったんだよ
君がそういう風に ずっと思い込んでいただけなのだから


音楽がないと 生きていけないって言っていたあの娘も
いつの日か マイクを置いてしまわないといけなくなったんだ
それは誰にも言えない とても寂しい決断だったけど 
だけど心のどこかで 諦めてもいい理由をずっと欲していたんだ

君の心の中のスナフキンは言う

すぐに自分のこと 許せてしまうだろう
すぐ別のことに 逃げてしまえるだろう
だけどそれでも 自分の場所を見失いそうになったとき
いつだって ここに戻ってきてもいいんだよ


舞台の真ん中で ちゃんと前を向いて歌った彼も今じゃ
頭を下げて過ごす日々 足元ばかり気にして歩いて
部屋に閉じ籠っては 誰も聴いちゃくれないような歌を作って
そいつをこっそりと ネットの世界の片隅で披露するのだ

君の心の中のスナフキンは言う

何もやり方は ひとつじゃないさ
この世は全部が 大きな舞台なんだから
誰も見向きもしないなら 自分のためと言い張ればいい
どうやってでも それをやめることができないならば


毎日が冒険だったあの頃は過ぎ
輝かしい自分は今じゃもう昔話の中
暑い日には駆け回って汗かいて
寒い日には仲間たちと身を寄せ合って
終わりのない未来へ向かったんだ
そんな今僕らがいるのは
そうやってたどり着いた場所だ
だけど未だにゴールとは呼べないだろう

君の心の中のスナフキンは元気かい?
まだおんなじように歌ってるかい?


自由詩 君の心の中のスナフキン Copyright itukamitaniji 2015-11-26 01:31:41
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