42
itukamitaniji

42

教室の床には
紙屑がそこら中にちらばっていた

君たち教室の床はな
ゴミ箱じゃないんだぞって
先生の話も聞かないで子どもたちは
紙を切り刻むのに夢中になっている
あちこちから
チョキチョキとはさみの音が聞こえる


だって先生が言ったんじゃん…

どこからともなく声が上がる
A4の紙をひらひらさせながら
ハサミを片手にその子は言う

「だって先生が言ったんじゃん
紙を半分に切って重ねる作業を
42回繰り返すだけで
それが月まで積み上がる」って


いやいや言ったけどもだな…
だからって今やることじゃないだろう
そもそも42回も切れるわけないだろう
あれはもしもの話をしただけでだな
それより今は君たちの大事な進路の話を
しているのであってだなって
先生の話も聞かないで
子どもたちは必死になって
はさみを動かし続けてる

半分に切って重ねて
重ねては切って
切ってはまた重ねて
重ねてはまたまた切って…

学級通信も
小テストのプリントも
給食献立表も
さっき配ったばかりの
進路希望調査のプリントも
見事に片っ端から散り散りに


そうかそうか分かった分かった
先生が悪かったんだな
42回切ったら
月へとたどり着く話なんかよりも先に

教室がゴミ箱ではないことや
人の話はちゃんと聞くことや
配られたプリントを
ぞんざいに扱うなということを
教えるべきだったんだな


自由詩 42 Copyright itukamitaniji 2015-11-15 02:47:31
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