未来
itukamitaniji

未来

くたびれた大きなバスが
大袈裟に息を吐き出して発車した
窓ガラスに映るのは
やはり同じようにくたびれた顔たち
拝啓、エメット・ブラウン博士
ここにはタイムマシンもなければ
そもそも宙に浮かぶ車がない
僕たちはいつだって地を這って生きる

手のひらサイズの小さな相棒
そいつは文句のひとつも言わないで
好きなとき好きなだけ遊んでくれる
そいつはなんでも見せてくれる
行ったことのない場所の風景から
女の裸の細部の細部まで
公園で拾ったカピカピのエロ本に
ドキドキした頃が懐かしいよ

頭でっかちな子供たちへ
お前がうざいきもいと罵る大人たちこそ
お前の生きる今を作っている
例外はあるかもしれないけど
産まれる場所も環境も選べない
だけどきっと咲いた場所で笑えるよ
そしていつかそんなお前たちこそが
世界を作りかえる時がやってくるんだ

いつまでも明るい街のビルの隙間
見えない見えないと言うけれど
夜空に案外星が見えるもんだな
当たり前だが手を伸ばしても
捕まえることはできないけれど
その光は感じることができるだろう
ディスプレイに映っているんじゃない
あなたが実際に見ている光だろう


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諦める
諦めない
諦め方すらもう忘れてしまった
たくさんの生傷を刻んだまま
今この場所に
立っているこの両足こそ
あの日つまづいて転げて
血だらけになった両足だ

忘れないで
その両足が歩む道の先だけが
未来と呼べる場所に繋がっていること


自由詩 未来 Copyright itukamitaniji 2015-10-22 13:01:10
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