山田さん
たま

地下二階で 小説を書いている
と、謂ったのは誰だったかしら すっかり忘れてしまった

ね、詩人はどこで詩を書くの?
地上?
地下?
雲の上?
あ、そうだ 地の底かしら

小説と謂えども地上の出来事を書くのだから、何も、地下二階で書くことないと思うけど、それは詩も同じだと謂えるはず
そうかしら 
わたしはもうそんなこと、どうでもよくなったの
地上で書くから薄っぺらくて、誰も認めてくれないとか
地下一階ではまだ浅いとか
地下二階まで降りて書かなきゃあ、小説とは謂えないよとか
それで、詩も同じでしょって謂われても
それは 違うでしょうって

どう違うかは わからないけど
だからもう そんなことどうでもいいの
地下二階で 童話は書きたくないでしょう 
ね?

私が、わたしに 謂い分けしなければ
新しい
小説も、
詩も、
生まれない
きっと悔しいはずなのに それは誰にも謂えなくて
明日になればそんな謂い分けも色褪せてしまうから、幾日も眠って忘れてしまう
今までも 
そうしてきた
ずっと、そうしてきた

夜が 明けるまで

それがもう、できない理由があると謂うならば
せめて、このまま
地上で死にたい

地の底の虫たちには喰われたくはない
きのう巣立った 
鴎の餌になりたい
そうしてずっと、遠くまで運ばれたい
海の上を

ずっと、
ずっと、
恋も詩も育たない 火山島まで

山田さんに 会いたくて












自由詩 山田さん Copyright たま 2015-10-19 11:14:16縦
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