不揮発性の諸君
あおば

151016

透明な液体が
土壌に浸み込んで
悪さをするという
液体の成分は何なのか
放射性物質かもしれないと
口に出すのが習慣化して
そうかもしれないと
ガイガーカウンターで計測してもらう
そんな計測では不十分だとの声を受けて
なにやらの新しい機器にかけてみる
放射性物質ではなかった
危険な農薬かもしれないと言う人も居て
化学分析を依頼したところ
塩分濃度が異常に高い
殆ど飽和溶液に近いと言われた
道理で付近の草木が枯れるわけだ
しかし、動物にはさほど害は有るまい
必要物質でも有るからだと言ったら
愛犬家が犬がなめたりして害になるから
汚染土壌はすべて撤去して土壌を入れ替えて欲しいと言う
隣接した農家も賛成したので
重機で剥ぎ取り、土壌を入れ替える
そんなわけで今年度の工事用予算は使い切りましたから
今後は何が起きても来年度の支払いとなりますから
業者さんにはよろしくお伝え下さい
今までため口を聞いていた人も口を謹んで
相手を立てるようにしてなんとかこの危機を
乗り切ってください
液体をまいた人物を特定して多額の損害賠償を支払ってもらうのはいかがかと提案したところ
捜査費用も不足気味なのでこれ以上調査員、捜査員の派遣は無理ですと
やるならボランテイァで願います
くれぐれも人権侵害は起こさないように
一切を個人の責任で執り行ってください
無慈悲な指令が下り
塩害に悩む人は無くなったが
今年度これからを乗り越えるのはなかなか難儀だなと
気分が落ち込んだ
しかし、いったい誰が、塩水を撒いたのか
塩と言っても、無料ではない
どこから入手して、どうやって水にとかし、どうやって撒いたのか
疑問は募るばかりだが
忙しい毎日にまぎれてこの事件は忘られてゆく
野犬の群れが戯れに小便をしたとも思えないから
やはり、人為的な事件なのだと考えると
世の中には無益なことに費用を費やして
またそれに踊らされて費用を費やすのを気にしないこともあるのだなと
結論としては、損をしたのは無関係な不揮発性住民諸君だけのようである
不揮発性とは、環境に応じて簡単には住所変更を出来ない、大多数の住民のことであるのは言うまでもありませんね


自由詩 不揮発性の諸君 Copyright あおば 2015-10-16 09:15:03
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