リコリス
亜樹

レントゲンに映らない黒い綿埃が私の肺にたまる頃、
今年もあの赤い花が寂しい寂しい休耕田の、
それでも草だけは刈った畦を彩り、
そうして見る間に色あせていく。

息を吸う。
吐く。
吐息に混ざる白い色。
静かに立ち上る煙は、
物言わぬ夏の名残を焼いている。

もう何も動かなくなる季節に、
もてあました黒。
夏の影。
間違えようのない悪意。

凝り固まった飴は、
やっぱり今日もまずかった。


自由詩 リコリス Copyright 亜樹 2015-10-14 21:55:57
notebook Home 戻る  過去 未来