本を育てる
あおば

              151001

木を育てるには水を与え植物生育必要な栄養素を与え、日の光に当ててやると良い
そんなの当たり前ジャンと思うのだが、現実はなかなかそうなっておりません。
痩せたに日当たりの悪い中庭にイチョウを植えた
銀杏を採ろうというわけだ
雑草が生えると栄養を取られるから一本残らず引き抜く
日当たりがイマイチなので大きな反射鏡を屋根に置き
NC制御で太陽を当てようを追いかけさせた
イチョウ用の肥料も与えた
水は、風呂の水を水中ポンプでタンクに溜め込み
日々そこから汲んでじょうろで撒いた
苦心惨憺、木はだんだん伸びて、屋根の高さを超え
NC制御も不要となった
そろそろ銀杏がと期待したが
雄の木だと判明した
どこか近くに雌の木があれば、そこで銀杏がなるであろう
この苦労は無駄にしたくないと
「木の育て方」という初心者用の解説書を書き上げた
実の成る木を植えたいという隠れた需要を掘り起こし
2万部も出て行った
次は「本の育て方」を何人かの作家に依頼して、プロ志望者用に編んでみたいと思っていたが、残念ながら、稿料と印税の負担に耐えかねて計画は破綻した。
大きく育ち、保護樹木のプレートを巻いた中庭のイチョウを見るたびに
育てるのは気を育てるのと似ていると思い、思い切って応募した
あとは厳正なる審査を待つだけだが、それまで気を張り詰めておられるか
少し自信がない
気力だ! 気力だ! と叫びながら、オリンピックでも活躍した我が娘を
肩車してリング上を闊歩した元プロレスラーの嬉しそうな顔
巧みに気力を育てあげたのだなとその光景を思い出しながら記す。



初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、かんなさん。





自由詩 本を育てる Copyright あおば 2015-10-01 22:04:06
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