名づく
あおば

             150922

超立体とマスクのパッケージに白抜きのゴシック文字で書いてある
大きな文字で書いてあり、息がマスク端から漏れないように
ぴたりと顔に密着できるように出来ていて
誰が名づけたのかはわからない
コピーライターか
開発担当者か
販売会社の営業会議で決まったのか
それとも社長の会長の鶴の一声で決まったのか
パッケージには販売会社名は記されているが製造会社名が無い
日本製とも大きめな文字で記されていて、製品の品質を保証するかのようだ
登録商標されているだろうから、同じ名前のマスクを売り出すわけにはいかないだろう
名前とは、経済的な価値があるものとも知れるが
私の名前は何の経済的な価値も生まない
本の著者にサインしましょうかと尋ねられたとき
何々様へとかなんとか記されたら、古本として売却する時
安く買い叩かれるだろう
私が超有名人ならば、かなり高価に売れるかもしれないが
お店で買うときの価格と仕入れ値との違いはかなり違うものもあり
原価ただ同然のものでも購入気望者が多ければ、値段はどんどん上がり
とてもお金持ち以外には手が出ないものになってしまうかもしれない
名づけとは慎重にしなければならないが
私の名は実にいい加減、青葉は茂るから茂とは創造主への尊敬の念が無い
しかし、今更名前を変えるのもどうかと思うので、名前が元でトラブルが起こらない限り変えるつもりもない
タイトルを付けられる幸せを味わえる機会の少ない人は
我が子の名前に凝ることがある
最近では、ルビを振ってもらわなければ読めない名前が蔓延してしまい
しかし、その名前を読み間違えると人格を否定されたように苦情を申し立て
正確に読むことを要求する
名前なんかどうでもいいと言ったら
人は名前に惹かれて記憶に留めるのだと言われた
確かに超立体という名に惹かれて購入したマスク
今のところ付け心地は悪くない
マスクに限らず、名前は大事だよと妙な名前を親に付けられた知人が語る
何年も掛かり、やっと家庭裁判所に改名を許可された次第を語ってくれた
通名しか知らなかった私は、その方の本名を知らずに居たので
どんなに妙なのか判らないが、なかなか改名は認めようとしない裁判所が
認めたのだから
かなり妙な名前だったのだろう
名づけた親はどう思うか、それは勿論判らないが
親は親で確信を持って名づけたのであろうから
親不幸者と思っているかもしれないが
そのようなことをインタビューして知ろうとしても
本心を語る保証もないから
本当のところは、もしかしたら親本人も忘れてしまい
付けた名前だけを誇りを持って覚えているかもしれない
もしかしたら、改名が許可されたら名づけた親も、新しい名を覚えた結果、自分がつけた前の名前を忘れてしまったかもしれない
名づけるとは難しく奥深く、しかも簡単でもあり難しいものでもあり、凝りだすと考えがまとまらず、何晩も良く眠れなくなり、ノイローゼ状態になることもある
度胸のある人とそうでない人
人の相違は甚だしいものだが、名前は有限に近いから
古来からの名を嫌うと、なかなか良い名前を考え出せなくなる
名づけるのは、名誉あること、権力のあることの証でもあるから
名前をあんまり軽々しく扱ってはいけないよと耳元で囁く声もあり
このあたりでもう考えるのは止めにしようと思っている


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、かんなさん。








自由詩 名づく Copyright あおば 2015-09-24 20:15:11
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