だん
木屋 亞万

風のない場所で汗をかく
獣の毛がなびくときは
いつ?

空から音の降る日
潔く浴びた方が良い
地にしたたり落ちた音符が
服を濡らし靴に染み込む

踊ろう
委縮した芯を揉んで
火照る体に加速する血液
心臓からはじけ飛ぶ
濁った腐った憤懣鬱屈
群衆から爆発した
水蒸気は芝生を舞う
音の大きな生き物の
一つひとつが体毛として揺れる

叫ぼう
全員でなくていい
いつも通りを今日は外れて
てのひらを天に伸ばす
空はどこまでも遠い
音だって届かない
銀河がその先にある
銀のせせらぎに耳を澄ませて
吐き出そう
体内の星屑の求める声を

何も起きないまま過ぎていく
たくさんの人生のことを
今日は忘れよう
劇的でない感動的でない
事件も刺激もない
さして目立つことのない平凡な人生だ
きょうは今日だけは
わたしのなかのふるえるところぜんぶ
音にふるえて燃え上がれ

日が暮れたころに
花火があがる
空からの音はやむ
暗い道を帰りながらいつか
音の降る日の再来を待つ


自由詩 だん Copyright 木屋 亞万 2015-09-19 23:21:26
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