世界のはずれのコテッジで
梅昆布茶

世界のはずれの藁葺きのコテッジで
遠く草原にかかる月をのぞむ
( かつてこの月をめでた青年達が不毛なたたかいで旅立ったことも )

フィヨルドと火山を巡り
カレワラの世界にあそび
シベリウスの旋律を想う

何処ともしれないけれども
樹木のうたが聴こえる
仔馬と僕たちのためのみどりの丘があったりもする

ここは世界を収容する小部屋

ときどき鯨のうたが聴こえたり
オーロラのカーテンがそらにかかったりもする

ここはちょっとあたたかい空気
暁の寺や黄金寺院
メナム川の河口
こまかな水路が縦横にはしる

ここはジンバブエ
思想のはざまのなかで
翻弄されるのには慣れているし

思いついた曲想のままに
古い楽器をならす
部屋の中にしばし音が満ちる

世界のはずれのコテッジで
コンクリートの堅牢さに感謝する

いつも陥穽は待ち構えているが
足踏みばかりはしていられない

経験則のそとがわにある世界は
けっこう魅力的なんだ

とぎれとぎれに太古の微風が吹いてくる

現実にはほとんどコテッジにいないことが多いんだ

意味や目的はまあいいのではないかとおもっている
もっと裾野をひろげても損はしないし

世界のはずれの冷たいコテッジで
氷と炎の大地を読み込む

竹林のなか素朴な工房で
皮革職人が金箔を慎重にプレスしている

世界のはずれのコテッジに
からっぽで豊かな風が吹き抜ける















自由詩 世界のはずれのコテッジで Copyright 梅昆布茶 2015-08-21 03:09:00
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