深度
たりぽん(大理 奔)


目を細めてゆくと
遠くのものがはっきりとみえる
焦点を深くして
見通そうとするけれども
僕たちは
反射するモノのかたち
明るく、はっきりとした存在を競い
遠くとおくへ届こうとする
光年の光を覆い隠す

  簡単なことだ
  輝けばいい
  自らをもやして
  ただ
  かたちだけが
  うしなわれていく

一瞬にあろうとすることと
とおくに届こうとすることが
同じ場所にとどまれないのは
月を輝かせるものが
不在の夜に気づく夜盗の気配

  さあ、深度をとれ
  深くふかく見つめて
  誰かを大切に思うことは
  夜道に影をひくこと
  湿ったかおりのため息も
  伝わらないことばも
  ほんとうにあることに焦点をあてて
  ありのままをみつめて

視界のすべてを
そのときこそ
みひらいた瞳で
焼け付くその瞬間に

  伝えて、ことばで

  






自由詩 深度 Copyright たりぽん(大理 奔) 2015-07-26 01:12:50
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