いつかわすれたうたが
石瀬琳々

いつかわすれたうたが
君のくちびるにのぼったら
一艘の舟がこぎだすだろう
夕陽の海へ 雲のかなたへ


 (そして、振り返ることもなく)


いつかわすれたうたが
君のなみだにかわったら
一羽の鳥がとびたつだろう
夕陽の海へ 白い羽根をこぼして


 (ひとひら、まぶしく落ちていった)


戻っておいで わたしのこころよ
波濤はひかりを増してゆく
それだけが痛みのように
戻っておいで かつて愛したものよ
目を閉じると
夕陽の海ははるかな君へとつづいている


 (もえているのは あれは赤い花、
  血のような赤い花、)


いつかとばなくなった鳥が
君のつばさにかわったら
いつかわすれたうたを
君はうたって




自由詩 いつかわすれたうたが Copyright 石瀬琳々 2015-07-22 13:31:33
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