鳥とテレビ
馬野ミキ

ぼんやりとニュースを眺める
オナニーを終えて暇だからである
ニュースは、事件と事故がばかり放送する
あとは天気か
つげ義春の漫画に出てくる朝鮮人の李さんは鳥語が話せるが
それでも鳥は脳が小さいので餌の話か天気の話くらいしか出来ないらしい
人間が天気の話をしている時
俺は鳥について思い出す
どこかで誰かが1人死ぬことよりも、
今日港区の堂島さんの意識が格段に拡大したというようなことのほうが宇宙にとって大きな出来事の気が
俺にはする。


メインキャスターは毎日深刻な顔をしている
女はその横でそうですねと言ってる
大きな事件がない時は小さな事件を一生懸命探し出して
毎日深刻な顔をしている
それが仕事なのだ
台風が来れば喜んで現場のレポーターは一番雨風の強いところに出向き
ヘルメットをかぶって今にも吹き飛ばされそうな演出をしている
毎年、観測史上まれに見る天候に見舞われている
きっとたいしたことを観測してこなかったんだろう
俺は寝転んでけつをかきながら彼らを見ている
仕事をしていない俺が仕事をしている彼らを毎日見ている
そう 彼らは金を稼いでいるのだ
なぜなら俺と違って彼らは仕事をしている
テレビを見ているだけの俺は金をもらえない
テレビを見ることはバカにでも無能にでもできることだ
テレビを見ている人間を見ているとたいてい馬鹿か無能に見える
俺はさきいかをしゃぶりながらリモコンを押す
オナニーを終えもう今日することはないのである
俳優、歌手、アイドル、アナウンサー、落ちぶれたタレント、一発屋
様々な人が仕事をしている
皆、金を稼いでいる
鳥は空を飛んでいる
俺は何もしない。


自由詩 鳥とテレビ Copyright 馬野ミキ 2015-07-21 11:46:52
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