紫陽花の季節
そらの珊瑚

蒸発しそこなった昨日の雨は
道路の上で
小さな鏡になり
今日を映している
赤犬がうわずみを飲むたびに
現れるさざ波は
やがて左岸に消える
わたしは
人生において しそこなったことの
しようがないあれこれを考えてみたりした
時折
ためらいも憂いも持ち合わせていない
小さな長靴が
アマガエルを従えて
ざぶざぶと
盛大にハネをあげさせていく

生まれてまもない
水の実が
フェンスを越えて
丸い顔を
重たげにのぞかせている
干された黄色い傘が
晴れの時間を潰すため
ひどくでたらめな
しずくの歌を
聞かせるものだから
薄藍色に君は色づき
水由来のさみしさを手放して
ほんのひととき軽くなることだろう



自由詩 紫陽花の季節 Copyright そらの珊瑚 2015-06-20 14:32:58
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