リモートコントロール
梅昆布茶


戸棚の奥からでてきた何のものだかわからない古いリモコン
我が家ではときどきあるのだこういうことが
ためしにあちこち押してみる

わずかな振動が空気を震わせて
とつぜん世界が半壊
するわけはないのだが

買い物にでるときに遭った隣の親父さんが
やけに愛想がよすぎて頭がくらくらした
だって普段は仏頂面の見本みたいな人なんだ

それ以降グッドラック?の目白押し
道端で100円拾った
100円はおおきいので
また頭がくらくらした

こじれていた彼女から仲直りのメール
田舎から米と野菜がどっさり送られてきた
近所の嫌いな犬がなぜか吠えない
会社の上司がしきりに気色悪いヨイショをしてきたり
通勤電車のつながりが良すぎたり

世界がまるで僕にウインクしているようにも
感じられたんだ

いま考えればあれは僕のこころの
ちいさなしあわせスイッチだったんじゃあないかとおもうんだ

人間はささいなことで様ざまなスイッチが入ってしまうものだ
そのリモートコントローラーでさえ
どこにあるかわからない始末なんだろうなきっと

きみも戸棚の奥を捜してごらん
わけのわからないリモコンが出てきたら
ためしに押してみるといいよ

ただその結果世界が半壊しても
僕は保障しないからね




自由詩 リモートコントロール Copyright 梅昆布茶 2015-06-17 11:33:08
notebook Home 戻る