眼鏡。
あおば

150606


めがねの度が合わなくなってきた
またお金がかかるわね
本を買うお金がこうして消えて
めがねをかける必要の無い
兄弟姉妹が羨ましいと思う
そんな青春を終えて
請われて出かけた満州国
めがねを掛けていて良かったと
思う
少し卑劣な感覚だけど
日本人でよかったと思う
それと同じようなものだ
帰国の夜汽車の中
夢も見ないでうとうと眠る
故郷の東京に帰る
東京の田舎に帰る
冬でも集中暖房で
蛇口を捻れば
いつでもお湯が使えた満州のお屋敷から
床暖房でほかほかの自分の部屋から
井戸で水を汲み釜に入れ
土間の窯で沸かす
暖房は囲炉裏だけ
火鉢を使ったことあったかしら
雪は余り降らないけれど
寒い冬の冷たい水仕事にも耐えねばならない
そんな日本の東京の田舎に帰るのだ
夢みがちの満州国での生活と厳しい現実的な日本国と
比較するのは無理なのだ
無理を承知で生き抜いても
めがねの無い生活に戻れないように
めがねに合った顔になっていた




初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、梓ゆいさん。





自由詩 眼鏡。 Copyright あおば 2015-06-08 09:20:13
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