奥の堂、風の堂
あおば

           150528

二者択一の条理を尽くす侍の目が光る
もうすぐ壊されるお堂の屋根を通して
月の光が見えた
寂しさも無常も感じなくなって数年間
獣に近い感覚と感性を懐に何も考えず
横になるやすぐに眠る
眠りながらも敵性の音は感知できるから
今まで生き抜いてこられたのだ。
風の強い夜は光も冴えて、敵性の物音も
優しく溶かしてくれる
そんな優しい光が彼は好きだった
風の強い時だって、不安は無い
達人の域に達した彼の感覚は
常住坐臥穏やかに居られる
数年後には、どこかの住職となり
屋根の穴を塞いだりして村人に慕われているかもし
れない
風の無い夜に湿気を感じながらも起きている私の
皮膚は乾いていて、まだ未練を募らせているようだ。



初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、洗剤イヤ子さん。





自由詩 奥の堂、風の堂 Copyright あおば 2015-05-30 20:19:20
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