波打際の人魚のために
mizu K


トンネルぬけて山をぬけたら
うみがみえるよ
くずれかけた駅舎と
目を焼く砂浜
すぐ背後にせまるあおぐろい山々
線路に分かたれた

境界線のむこう
ぎょっとするといいよ
コントラストがはげしいよ
波がざっぱーん、ざっぱーんって
当たって砕けて壊している
ボートの破片がぷかぷかぷか

波打際には人魚がいるよ
鳥にくわれた人魚がいるよ
人魚にバケツをかぶせられてしずめられて
あやうく死にそうになった人が
そのへんで青ざめて
がたがたがたがたふるえているよ

つりざおは飛んでいったよ
おかしな擬音をくっつけて飛んでいったよ
ちかくの岩礁には
二日酔いの人魚がたおれていて
とおくの水平線までえんえんと
うみの線路がつづいていたよ


自由詩 波打際の人魚のために Copyright mizu K 2015-05-30 01:34:36
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