2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑨〈4/23〜5/14>
平瀬たかのり
?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮)
総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。
(2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし)
○キサラギ 6.5(+)
○クロワッサンで朝食を 4.5(+)
○アイ・アム・キューブリック 5.5(+)
○サウンド・オブ・ミュージック 7.5
○サラの鍵 8
○シラノ・ド・ベルジュラック 7.5
○探偵はBARにいる 6.5(−)
○探偵はBARにいる2 5.5(+)
○さよなら、みどりちゃん 3(−)
○魍魎の匣 6(−)
○日本のいちばん長い日 7.5
○大列車強盗 5.5(+)
○アパートの鍵貸します 8
○白と黒 7.5
○外事警察 5(+)
○うた魂 6.5(+)
○ぼくたちの家族 7(+)
○2001年宇宙の旅 4.5(−)
以上18編
○キサラギ
ワンシチュエーション・コメディとしてはなかなかの出来栄え。密室に集まったそれぞれの実態が徐々に明かされていくという展開はやはり面白いですね。
○クロワッサンで朝食を
「突然炎のごとく」の名女優、ジャンヌ・モローがわがままな金持ちおばあちゃんぶりを好演するのだけど、「如何なく発揮」とまではいってなかったように思います。
○アイ・アム・キューブリック
スタンリー・キューブリックの名を騙り詐欺をくりかえしたという実在の人物がモデル。でもひたすらマヌケなんだよなあこいつが(笑)。「クヒオ大佐」のときも思ったけど、騙される人間見るのって面白いんですよねえ。それは騙す人、騙される人のトンチンカンぶりにこそ「面白うてやがて哀しき」人間のありようが象徴的に表わされるからじゃないでしょうか。
○サウンド・オブ・ミュージック
見事な音楽に、美しい映像にただただ満喫。もっと教育的な感じの作品かなあと思ってたんだけど、けしてそんなことはなく、後半スリル感もあったりしてたいへん楽しく鑑賞できました。
○サラの鍵
ナチス占領下のパリ、弟を小部屋にかくまったとき、少女サラは両親とともにナチに拘束されてしまった――。一人の女性が送った過酷な運命が、その小部屋と縁あった現代の女性によって解き明かされていく。
後半少し駆け足過ぎではあります。でも傑作であることに変わりなし。
○シラノ・ド・ベルジュラック
「二十日鼠と人間」「若草物語」でも思いましたが、こういう文芸大作を上手にシナリオ化してる作品に出会うと、原作を読みたくなりますね。
○探偵はBARにいる
○探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点
もしかしてもしかすると、このシリーズは 「釣りバカ日誌」の終焉で終わってしまったと悲観してた〈大衆娯楽としての邦画〉を復権させるかもしれない。「釣りバカ」ほど老若男女万民受けを狙ってるわけではないのだけれど。大泉洋―松田竜平の二人もなかなかのコンビぶり。
ただ2でやや失速の感は否めず。おそらく作られるであろう三作目が正念場だと思う。
○さよならみどりちゃん
期待してたんだけどなあ……車でいうとずっとノッキング起こしてるような状態。主人公が勤めるスナックの場面で「あ、のれそう」と思うんだけど、恋愛場面になってグダグダってなって、その繰り返し。星野真里もいい女優さんだと思うのだけど、「観てる男客へのごほうび」的に最後の最後に脱がせるのなら、最初からちゃんと脱がせてあげないと。あれじゃ逆に可哀相ですよ。女の子が観たらまた印象違うのかなあこの映画。ただボクの中の中学生女子「櫻子ちゃん」は反応しなかったっす。
○魍魎の匣
京極夏彦原作。近年のオカルト作品としてはまあまあの出来でしょうか。中国ロケも生きてました。
ボクの一押し女優、谷村美月が出てくるのですが、やっぱりこの人、八年前のこのころから上手過ぎて話を展開させるような役回りで、可哀相な結果になっちゃってたりするのですよねぇ。ドカーンと代表作ほしいものですねえ。
○日本のいちばん長い日
1945年8月15日、玉音放送録音レコードを強奪しようとした一部将校たちを中心に描いた作品。監督は喜劇に本領を発揮する岡本喜八。この重いテーマを喜八監督が撮ってこそ伝わる作品、遺る作品に仕上がってるのだと思います。
アナウンサー役で若き日の加山雄三が出てます。今までボクはこの人を「過大評価されてる人」と思ってたのですが、本作で初めてこの人を評価しました。戦後を生きようとする青年の意志の強さ、それはこの人にしか体現できなかったものなのかもしれない。だからこそ彼が「若大将」になったのかもしれません。
○大列車強盗
犯罪モノとしておもしろくないことはなかったけど、タイトルの割にはスペクタクル感に欠けました。
○アパートの鍵貸します
ずっと観たかった名匠ビリー・ワイルダーの作品。自分の部屋を上司たちのあいびき部屋に提供する男のかなしくもおかしい物語。とにかくシナリオがすばらしい。完璧といってもいい。そして人物がそれぞれかわいい。ひたすらにオシャレで愉快。こういう作品、現代が舞台じゃもう作ろうにも作れないのじゃないかなあ。どうぞ観て幸せな気分になってください。
○白と黒
橋本忍脚本、堀川弘通監督のサスペンスもの、かつ法廷劇。二転三転するストーリー、小林圭樹、仲代達矢の重厚な演技。そして意外な結末。なぜこれが未ソフト化なのだろう。
○外事警察 その男に騙されるな
NHKで放送されたテレビシリーズの映画化だそうですが、それ以上でも以下でもない感じでした。
○うた魂
「リンダリンダリンダ」「スウィングガールズ」「がんばっていきまっしょい」と同じく女子部活もの。やっぱりこういう〈女子高生ガンバリ映画〉っておっちゃんは無条件で1点プラスです(笑)。ただ『ぼくがぼくであるために』の見せ方はもう少し工夫がほしかった。
○ぼくたちの家族
邦画史上に残る傑作、「川の底からこんにちは」を撮った新鋭、石井裕也監督作品。 「舟を編む」「バンクーバーの朝日」よりもこちらのほうが断然いい。オカン脳腫瘍で余命一週間の宣告。そのオカン借金まみれ、オトンの会社も火の車。長男嫁サン妊娠したばっかり。次男はぐーたら。おいおいどうなるんだよこの一家。
やっぱり目線が低いですね、石井監督は。そして「希望」を信じてる。人生は生きるに足るってことをはっきり謳いあげてる脚本家であり監督さんだと思います。
お医者さん役の鶴見辰吾、1シーンしか出てこないのだけど、ごっそりおいしいところ持っていってます。「ずるいわぁ〜」と言いながら号泣。
○2001年宇宙の旅
やってしもた。キューブリック大好きなんだけど、これはやってしもてたわ。
どうして中盤の宇宙船コンピューター「HAL9000」の反乱だけに焦点当てて描かなかったのだろう。前半、後半を「映像」で魅せようとしてるんだけど、はっきり言って「ちゃっちい」。伝わりませんよ、あんな原始人が骨放りあげたり、ショボイCGの宇宙船飛行なんか。関西弁でいうと「何をいちびっとるねん」てなもんですわ。何をどういうふうに解釈しろというのよ。鑑賞後に粗筋読んで「ああ、そういうことだったのね」って…どれだけ上から目線なわけよ。キューブリックは映像よりも物語の監督さんだと思ってます。
でもいろいろ難解な部分も含めての「天才」なのかなあ。「?何じゃこれ→?うわ、面白い!→?だから何やねんこれ!」みたいな映画でした。
散文(批評随筆小説等)
2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑨〈4/23〜5/14>
Copyright
平瀬たかのり
2015-05-15 22:53:17