「歩」の少年
イナエ

盤面に行儀良く並んだ歩兵
敵の攻撃を真っ先に受け将を守る
時には味方にも無視され
時には邪魔もの扱いされる歩兵
敵陣深く突入して将となるも
あっさり討ち死に
そして 次には
味方だった将を殺せと命じられる
指し手の意のまま操られる駒

叔父の家の欄間から
見下ろしていた少年兵
幼かったぼくのあこがれだった従兄
家を建て替えられてから
もう掲げられることはなかったけれど
ぼくには今もはっきりと見える

自ら志願した飛行兵
白いマフラーをなびかせて飛び立つ姿
そして
艦砲射撃の中に突っ込み
火だるまになっていった姿
これが国を守ることだと
おのれに言い聞かせて

少年を
煽ったものは誰だったろう
煽らせたものは何だだったろう

          (「蕊」五五号テーマ「歩」の詩より)


自由詩 「歩」の少年 Copyright イナエ 2015-04-30 22:08:53縦
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