友達の話
チアーヌ

友達の話。

彼はとても良い人で、10代の頃からの友達。
一人暮らしをしてた頃は、普通にうちに泊めたり、彼のうちに泊めてもらったり。女の子の友達と、感覚は全く一緒で、さすがにお風呂に一緒に入ったりはしなかったけど、たとえ入ったとしても別に何か起こったりはしなかったと思う。彼の前で着替えしたりするのもわたしは全然平気で、下着姿は何回も見せてる。もちろん性的なことはなにもない。
彼は、男の人の方が好きだったので。
女の子が同性感覚だと彼は言っていた。わたしも彼に対しては全く同性感覚。男性に対して感じる違和を感じたことはなかった。

音楽仲間だった。
彼はすごく上手いのに、いろいろ事情もあったのか、苦労して勉強していた。性格をひとことで現せば、真面目で、誠実。
でも実は、彼が男の人が好きだと知ったのは、知り合ってからしばらくたってから。きっかけは、一緒に映画を見に行ったこと。その映画は、同性愛に悩む男の子たちのルポルタージュものだった。
「見たい映画があるから付き合って」
と言われて、行ったら、そういう映画だった。そのあと喫茶店で映画についておしゃべりをしていて、理解した。わかった。
もちろんそのあとも普通に友達だ。
ただ、彼がたまに、好きだと思う人のことを話すようになった。
「彼はすごくいい人なんだ。すごく優しくて誠実で。ずるいところがないんだ。あんな人は滅多にいない」
好きだとは言わないんだけど、好きだということは伝わってきた。
わたしと同い年の彼は、今も独身で、今年おうちを建てた。
仕事も順調みたいだ。
たまに会うことがあると、相変わらず楽しくおしゃべりする。

わたしはたまに考えることがある、それは彼に恋人ができるといいなということ。彼が大きなおうちで、一人でいるのを考えるのは少しつらい。
彼は孤独を愛する人じゃないから。本当はすごく寂しがりやで、彼のピアノはいつもとても繊細な音をたてるから。ショパンとシューマンが好きで、現代音楽を得意としない彼と、一緒に暮らしてくれる素敵な男性は現れないものだろうか。彼の好みをわたしは良く知ってる。だから、彼にぴったりの人を見かけると、つい、彼を紹介したいなあなんて思ったりする。でもそれはとても難しい。
いつか彼に、素敵なパートナーが現れて、あのおうちで二人で暮らしてくれないかなあとわたしは思う。そうしたら、わたしは甘いものが大好きな彼のためにケーキを焼いて遊びに行こう。っていうか行きたい。

余計なお世話かもしれないし、彼にはこんなこと言わないけど、彼が建てたというおうちの写真を見て、なんだかそう思ってしまいました。
ふと、書きたくなって、書きました。



散文(批評随筆小説等) 友達の話 Copyright チアーヌ 2005-02-08 15:49:45
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