半透明
nonya


誰かに飲み干された君は
埃っぽい街をぼんやり透かして
仄かな緑色で薄笑いしていた
濁り切れずに立ち尽くしていた

可憐ながらんどうの君は
微かにアップルタイザーの匂いがして
僕は言葉を選べなかった
仕方なく太陽に君をかざした

破れかけた君のラベルには
甘さ抑えめの天然果汁だと
飲み終えたらゴミ箱へと
つまらないゴシック体で書かれていた

生半可に透き通っていたら
たぶん痛いだけだよね
思わず漏らした気泡すら
すぐに見透かされてしまうから
複雑に混ざり合った成分も
ただ爽やかに見通されてしまうから

するっと

薄っぺらな優しさに緩んだ
僕の指先から逃れた君は
コンクリートの歩道の上に
何のためらいもなく落下した

可憐な悲鳴をあげて
粉々に砕け散った君の欠片は
それでも半透明に薄笑いしながら
午後のぼんやりとした雑踏の中で
きらきらと尖っていた




自由詩 半透明 Copyright nonya 2015-04-11 18:14:47
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