2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑦〈3/21〜4/4〉
平瀬たかのり

?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮)
総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。
(2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし)

○豚と軍艦 5(+)
○ブレードランナー 4.5(+)
○ミッドナイト・エキスプレス4.5(+)
○二十日鼠と人間 8
○翔んだカップル 5(−)
○若草の萌えるころ 7(+)
○青春PART? 7(+)
○声をかくす人 8
○花よりもなほ 5(+)
○フルメタル・ジャケット 8.5
○約三十の嘘 5(+)
○奇跡の人 7.5
○グロリア 8

以上13編

再鑑賞作品 櫻の園

○豚と軍艦
 人間のどろどろした業を真正面から描く今村昌平監督作品としてはややものたりなかった。(『復讐するは我にあり』を早く観ないとなあ)クライマックスの豚を解き放つ場面はさすがに強烈な印象を残してますが。まあ「人間蒸発」観たあとではねぇ。

○ブレードランナー
 すごい楽しみにしてたんだけどガッカリ。確かに映像表現は斬新で、時代経ても色あせておらず、評価すべきところもあるのだろうけど、何せストーリーがゆるゆる。なかなか盛り上がらず、ようやく盛り上がりかけたらダレ、盛り上がりかけたらダレの繰り返し。そのゆるさを目新しい映像でカバーしている、そう思えてなりませんでした。

○ミッドナイト・エキスプレス
 脱獄モノ。実話をもとに作られてるらしいけど、国家間の駆け引きにほんろうされる主人公にシンパシーいだけないまま話が終わりました。

○二十日鼠と人間
 未読なのですが、きっとスタインベックの原作が素晴らしいのです。その素晴らしい文学作品を簡潔かつ丁寧にシナリオ化、映像化しているのです。
 足りない男、また彼を見捨てることが出来ない男、二人の哀しみが画面からずっと伝わり続けてきます。

○翔んだカップル
 80年代アイドル映画。ピチピチの薬師丸ひろ子と石原真理子を観ることができます。まあ、それくらい。相米監督作品ですが、名作ラブコメ漫画を映画化するのはとても難しいという見本のような出来栄え。

○若草の萌えるころ 
 思春期の少女が大好きな叔母の危篤で不安定な精神状態になり、夜の街を彷徨う中でいろんな人と出会い、そして・・・というお話。ドラマ性には欠けるのですが、特に今の10代女子に特に観てほしい作品です。
 主演のジョアンナ・シムカスが瑞々しく美しい。どうも撮影当時、監督と彼女は恋愛関係にあったそうで、なるほど。何かそういうものが伝わり続けてたんですよね、観てる間中。「惚れた女の『若草の萌えるころ』を映画化してやるぜ」観たいな感じが。

○青春PART?
 これがあるからATG作品は油断ならない。競輪選手を志す若者のお話なのですが、まず当時の競輪学校の中を観ることができるだけでも得した気分。汗が飛び散り、挫折の痛みが伝わる「青春熱画」。『ヒポクラテスたち』をほうふつとさせるものがありました。

○声をかくす人
 リンカーン殺害に関与したとして、死刑執行された下宿屋おかみが主人公。彼女はアメリカで初めての女性死刑囚でした。
 素晴らしい人間ドラマですが、法廷劇としても一級品。勝者が敗者を裁く、その理不尽さに疑問を抱いたまま話に引き込まれていきます。
 そしてラストに訪れる安堵、しかしすぐさまの絶望。実話だけに思わず目を閉じ「ああ・・・」と呻いてしまった。
 いい作品だけに、邦題は何とかならなかったかと思う。別に法廷で喋らないわけじゃないし、主人公。

○花よりもなほ 
 忠臣蔵の外伝的なお話でもあったのね。あ、そういや「花よりもなほ」は赤穂の殿様の辞世の句の一節だわ。人情ものとしては、まあこんなものかな。

○フルメタル・ジャケット
 二十年ぶりくらいの鑑賞。大好きなのですこの映画。
 二時間ぴったりの中で「戦争が圧殺する個人」を見せるキューブリックの職人技。彼はどんな悲惨、苛烈な状況を描いても観客に「笑い」をよびおこすことができる映像作家なのです。あのバカ教官の罵りなんて、きっと字幕なくても大爆笑ですから。ラストのミッキーマウスマーチも、寒気感じながら笑うんだよなあ。戦争の悲劇を描いてます。でもこの作品は最上級のファルス(喜劇)でもあるのです。彼と新藤兼人さんには大喜劇を一本撮ってほしかったと思う。

○約三十の嘘
 詐欺師集団のワンシチュエーションものという設定に大いに惹かれて期待して観はじめたのだけど、ならばもっとドキドキさせてくれないと・・・。元は舞台劇。べつに映像化しなくてもよかったんじゃないの、これ。
 重要な役割を担う伴杏里が下手。。マッチアップすることになる中谷美紀が上手いだけに彼女のお遊戯会レベルが際立ってしまった。

○奇跡の人
 ヘレン・ケラー物語です。大感動作でもあるのですが、それ以上にこれは、<ケラー家離れ>を舞台にした、赤コーナー・ヘレン対青コーナー・サリバンという「女vs女」の凄絶なるフルコンタクトバトル映画です。ボクは途中からそういう観方をしていました。だからこそ最後のヘレンが「事物−意味−言葉」を獲得する場面で快哉を叫んだのです。

○グロリア
 おばちゃんハードボイルド。ジーナ・ローランズ演じるこのおばちゃんがただものではないのです。主人公グロリアは「組織」に追われる子供を連れてやむなく逃避行をしてくのですが、始めは「なんでわたしが・・・」みたいな感じで子供置き去りにしたりするのです。でもだんだんと母性に目覚めていくのですよね、彼女が。この過程と心の揺れは、主人公が生粋のおばちゃんだからこそ伝わってくるのです。シャロン・ストーンで99年にリメイクされたらしいけど、当時の彼女ではねぇ・・・。まあ観てみたい気持ちはありますが。
 女優の、いや、もっと言うと女性の輝きは年齢じゃ測れないのですよ、そういうことをボクに気づかせてくれた記念碑的アクション映画であります。

再鑑賞作
○櫻の園
 やっぱりまた観てしまった(笑)。部員のひとりのお姉さんがアイスさしいれにやってくる場面がいいのですよ。やはり未成年が中心の映画は、どこかで家族との繋がりを提示しないと、作品に深みが現れないのです。
 
 今回のゼヒモノは「フルメタル・ジャケット」と「グロリア」ですね、やはり。
 もしもあなたがしょんぼりしている女性なら、「エリン・ブロコビッチ」と「グロリア」を観て元気になってください。
 


散文(批評随筆小説等) 2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑦〈3/21〜4/4〉 Copyright 平瀬たかのり 2015-04-08 15:05:29
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