2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑥〈3/10〜20〉
平瀬たかのり

?作品力=5点 ?余韻力=3点 ?再鑑賞魅力=2点(?には鑑賞後に歓談を誘発する力があるか、?には保存価値があるかも考慮)
総合的な印象として0.5ポイント加えるか否かを基準として+、−を付加。
(2.5点以下また7.5点以上は+、−表記はなし)

○股旅 7.5
○現金に体を張れ 8
○勝利への旅立ち 6.5(+)
○酔いがさめたらうちに帰ろう 6.5(+)
○卑弥呼 2
○東ベルリンから来た女 5(−)
○最強のふたり 6(+)
○博士の異常な愛情 8.5
○人間蒸発 8
○サイコ2 6(+)
○若草物語 7(+)
○エリン・ブロコビッチ7(+)
○サンダーアーム/龍兄虎弟 5.5(+)


                    以上13編

○股旅
 市川崑監督作品。渡世人へと身をやつした三人の若者の敗残を描いて秀逸。シナリオは同監督とともに谷川俊太郎御大の名前も併記されています。おそらく渡世人が切る仁義の口上などは谷川さんが書かれたのではないでしょうか。
 時代ものではありますが、描かれているのは普遍的な「青春残酷物語」。おすすめします。

○現金に体を張れ
 スタンリー・キューブリック、初期の傑作。チームによる現金強奪という、サスペンス上ありがちな話しですが、これまで観たその手の作品の中で最も興奮したかもしれない。
やっぱり話は単純でいいのです。その中に起承転結がキチッと決まったエピソードを過不足なく収めることができるか、そして美しい結末に持っていけるか、それがやはりサスペンス映画のキモなのです。

○勝利への旅立ち
 弱小バスケ部が敏腕指導者によって強くなり勝ち上がっていくという王道熱血スポ根もの。悪い作品ではありません。爽快感もあります。ただやはりボクは「ベアーズ」のような泣き笑いがもっと散りばめられた中でこういうお話を観たいのだなあ。
 メンバーそれぞれのキャラがイマイチ立っていなかったのと、試合の場面でシュートシーンばかりがスローモーションでクローズアップされていたのが難点だと思いました。ただ鬼監督にジーン・ハックマン、アル中コーチにデニス・ホッパーという配役はもうお見事というより他なし。あの二人が組んだらそりゃ弱いチームも強くなろう。

○酔いがさめたらうちに帰ろう
 西原理恵子原作で同テーマの「毎日かあさん」も以前観ましたが、こちらの方が好きですね。永作博美、浅野忠信、二人ともモデルのイメージに合ってたと思います。「毎日〜」の主演は小泉今日子。なんだかあまり好きじゃないんだなあ、キョンキョンの演技って。下手ってわけじゃないのですが、なんかあざとさを感じるのですよね。
 
○卑弥呼
 ……ハァ、これがあるからATGの作品観るのって怖いのだよ。
 もちろん日本の古代を描くことに映像表現としての意味はあると思うけれども、篠田正浩監督、これじゃあ嫁さんの岩下志麻のプロモーションビデオだよ。そういや「悪霊島」でも同じこと思ったな。
 あとねえ、これは作られた時代ゆえのことでもあるのでしょうが、全身白塗り男女が舞をする場面が頻繁に出てくるのです。いわゆる前衛舞踏ってやつなのだろうけれど、あんなの見せられたってワシャわからんよ。そりゃ生で観たら迫力あるのかもしれないけどさ、スクリーンやテレビ画面通して伝わる力ってほとんどないですよ、あれ。立松和平原作の「蜜月」でもこういう踊りが出て来るのだけど、やっぱり「作ってる人たちの自己満足」にしか見えなかったもん。
 最後に「台詞 富岡多恵子」ってテロップ出たときはひっくり返った。そんなの初めて見た。共同脚本で、詩人で小説家のセンセイが台詞の部分だけ書いたってことなのか。それをわざわざ画面に載せるのかよ。自意識肥大に笑っちまう。小説の「……」とシナリオの「……」は似て非なるものなんだ。そんなの基本的なことだろう。だからこんなに台詞が響いてこないんだよ。
 カンヌのパルム・ドールにノミネートされた? はっ、知らんやん。勝手に選ばれてりゃいいじゃん!

○東ベルリンから来た女
 映像的筆致が重すぎ。まあ東西ドイツに別れてる時代設定で、越境がテーマとなるとこの重さも致し方なしか。

○最強のふたり
 最近のフランス映画ってこんなハートフルな作品が主流になりつつあるのかな。
 介護の部分をもう少し丁寧に描いてほしかった。
 観て楽しく、時間を損しない作品ではあります。
 
○博士の異常な愛情
 イエーイ! キューブリックばんざーい!!
 タイトルだけは知ってたけど、まさかこんなに面白い作品だったとは。不覚。
 トチ狂ったアメリカの将軍がソ連への核爆撃命令を戦闘機に命令しちゃったよ。戦闘機は連絡不可能モードに入っちゃったよ。どうするどうする大変だよ大統領!
 テーマがテーマだけにちょっと不謹慎だとは思うのだけど、えらいさんが集まって右往左往するさま(自分の都合とかむきだし。女から電話でせっつかれて早く帰りたいオッサンとかいる)はもうおかしくて仕方ない。
 ラストの映像と音楽のギャップがこれがまた恐ろしくも見事。
 いやいやこれ以上は言いますまい。プーチンさんが何やらきな臭いお言葉おっしゃられた今、ぜひこの作品をご覧ください。

○人間蒸発
 失踪した婚約者を探す女性を主人公にした今村昌平監督のドキュメント映画。
 すっごい作品。おしっこちびりそうなった。
 現在では絶対に無理。プライバシーも何もあったもんじゃないです。
 だんだんとむき出しになっていく人間の「業」は真実だけに寒気すら感じる。
 結局解決しないまま終わるのだけど、分からないままでいいよって気持ちになりました。
 やっぱり人間って面白い。主人公のお姉ちゃん、シラ切りとおしたまんま終わるんだもんなあ。これは多くの方に観ていただいて、意見交わしたい作品です。
 
○サイコ2
 ヒッチコックの名作「サイコ」の続編。屋上屋を重ねることになってないといいけど…と思って観はじめましたが、これはこれで単独の映画として楽しめました。アンソニー・パーキンスも「それから二十余年後」を見事に演じてさすがです。鑑賞においては本編をまず観られてからご覧になることをおすすめいたします。
 びっくりしたのは、ヒロインのメグ・ティリーという女優が鈴木杏に似てること。もう本当にそっくりで、途中から鈴木杏が演じてるようにしか思えないくらいでした。他人の空似とはいえそっくりすぎ。どこかで血が繋がってるんじゃなかろうか。

○若草物語(´94ver)
 えーごほん、ワタクシのココロの中には14歳の少女がひとり住んでおってだな、まあ彼女を大好きな「櫻の園」と応援しているセレッソ大阪から「桜子ちゃん」と名付けているわけなのであるが、さすがに彼女が反応したわけなのだな、この世界文学史上に燦然と輝く原作の本作にはな、うむ、ごほん。
「ちょっと後半駆け足すぎなのよね。でも観終わって原作読みたくなっちゃった。ということはいい映画なのだと思うのよね。四人姉妹を演じた彼女たちのプロフィール後で調べたりして、へぇ、なるほどねえ……ってなっちゃたったりして、てへっ」
 
○エリン・ブロコビッチ
 ジュリア・ロバーツっていうのは美人女優というよりやっぱり個性派、実力派女優だと思う。まあ「ファック!」「ファッキン!」の台詞の似合うこと。
 実話を元にしてる作品なのですが、うまいことおいしい場面だけ切り取って映画にしているように思いました。シナリオの勝利ですね。
 ちょっと「女版ロッキー」みたいなところもあり、好きな作品です。いろいろしんどくなってる女性が観たらきっと元気がもらえる作品。
「ジュリア〜っ! チクビチクビ!」
「るっさい、分かってやってるんだからほっといてよ ファッキン!」
みたいな場面あり(笑)
 
○サンダーアーム/龍兄虎弟
 ボクたち世代の男の子にとって「ジャッキー・チェン」という俳優は特殊な存在でありまして、「酔拳」とか「木人拳」とかテレビ放送される日はちょっとしたイベントでした。(そういえば「プロジェクトA」のテーマソング完璧に歌える同級生がいた)。
 久々に観たジャッキーはやはり元気いっぱい、アマゾネス軍団ぶちのめして、崖からダイブして熱気球の上に着地したりしてました。ラストのメイキング、NGシーンもお約束で「そうそう、これこれ!」ってなものです。B級映画は作品力3点が満点ですからね、総合5.5(+)でいいんです、はい。観せたいなあ、今の中学生男子にジャッキーの映画。テレビでやってほしいなあ。

 今回のゼヒモノはまあ「博士の異常な愛情」ももちろんそうなのですが、やっぱり「人間蒸発」ですね。今村監督のものは「復讐するは我にあり」をずっと観たいと思ってていまだ叶ってないのですが、それより先にこの隠れた名作を鑑賞できて、嬉しいといえば嬉しいのだけど、単純に嬉しいといってしまっていいのかどうか・・・。
 同じドキュメンタリー映画でも「ゆきゆきて神軍」は対象者のキワモノ感が半端じゃなかったのですけれど(あれはあれで凄い作品だと思う)、こっちは「市井の人」ですから、その分「人間の怖さ」がいっそう身近なものとして伝わってくるのです。というわけで「人間蒸発」ご覧になられたらお知らせください。感想述べあいたいです(笑)


散文(批評随筆小説等) 2015鑑賞映画採点及びひとことふたこと⑥〈3/10〜20〉 Copyright 平瀬たかのり 2015-03-20 22:24:09
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