nonya


たいていは
洗面所に置いてある
プラスチックの小さなコップだ
うっかり注ぎ過ぎると
すぐに溢れてしまう

もちろん
茶碗や湯飲みでもあるけれど
哀しいくらい量産品だから
いつ取り換えられても
気がつかないだろう

ときには
気障なティーカップになって
ゆったりと湯気を立ち上らせたいし

たまには
洒落たパスタ皿になって
クルクルとフォークでくすぐられたい

そんな
身の程知らずの夢を
白菜の古漬けを抱え込んだ
小鉢になって想い描いてみるけれど

せいぜい
使い込んだぐい呑みに
知らず知らず入ったひび割れから
うかれ水を染み出させるのが
関の山だ

いっそのこと
無骨などんぶりになって
来るものを拒まず
汚れることを恐れず
堂々と箸と渡り合いたい

と気張ったところで

けっきょく
鏡の前の長すぎる物思いは
プラスチックの小さなコップを
いつものように
溢れさせてしまうだけだ





自由詩Copyright nonya 2015-03-11 18:51:57
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