【 手袋の片っぽ 】
泡沫恋歌

冬の道のあちこちに
手袋の片方がよく落ちている

ポケットから
ものを取り出す時に落ちたのか
自転車の前かごから滑り落ちたのか
私も長年愛用していた
手袋の片っぽを失くしてしまった

 
仕方ないと諦めていたら
いつも通る道のブロック塀の上に
ちょこんと置かれてあった
きっと誰かが拾って
ここに置いてくれたのだろう

両方揃わないと
手袋としては役に立たない

道に落ちた手袋の片っぽ
自転車に踏まれ 自動車に轢かれ
雨に濡れて 風に吹き飛ばされて
どこか溝の中に落っこちて
憐れな末路となる

もし道端に落ちている
手袋の片っぽを見かけたら
知らんぷりしないで
また相棒とペアになれるように
どこか目につく場所に
そっと置いてあげてください



   
                            2015/03/02


自由詩 【 手袋の片っぽ 】 Copyright 泡沫恋歌 2015-03-02 21:33:41縦
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