春の小旅行
馬野ミキ

昼過ぎに起きて洗濯物を廻す
ベランダに出てみればまるで春みたいにいい天気じゃないか
家にいるのはもったいない

ネットで息子の耳鼻科を検索する
下敷きを無くしたらしいから買いに行ってやらなければ
学校の指定で無地のものでないとだめだそうである
西友は妖怪ウオッチとかしかなかったので
自転車はそのまま停めておいて昨春にオープンした無印まで歩いた
ぽっちゃりした女店員に無地の下敷きはありますか?と聞いたら
無いかもしれません ちょっと待って下さいと言われたが
透明のやつがあった
105円だった もう少し値が張るのかと思っていた
それから西友まで戻り食材を買いそろえる
だしが切れかけていたな
ししゃも 108円か 買おう 鮭以外の魚も食べさせなくては
それから今夜はステーキを焼こうじゃないか
買うのは一人前だが
3人で分けて食べよう

家に帰り保険証を用意して息子の帰りを待つ
が、何だかいてもたってもいられず学校まで迎えに行ってしまう
すれ違う小学生たちが何だかどいつもこいつもやたら邪悪にみえる

みつけた
俺の恋人

せかいを小さな人が1人で歩いている
息子は俺を見つけると驚きと歓びの表情を浮かべた
息子を自転車に載せる
いくぞ
後ろから息子を呼ぶクラスメイトの声が聞こえた
俺たちは振り返らないで坂道を走った

家に帰りランドセルを置かせ耳鼻科に向かう
いつもは空いているのだがなぜか客でごった返していた
明日にしよっか
うん
俺たちは大根畑を抜ける道を通った
区営の野球場があり「広いね」と息子が言った
一駅行くと前住んでいた町にたどり着くのだが
何だか時空を越えていくような感触がある
そこにはまだ生まれたばかりの息子や
つきあったばかりの俺と嫁さんが息をしているような気がした

前住んでいたマンションの前で自転車を停める
なつかしいね
うん
ブックオフに寄りそれぞれの漫画を買う
プレイステーション3はまったく値崩れする様子がないな
さあおうちへ帰ろう 今夜はステーキだ



自由詩 春の小旅行 Copyright 馬野ミキ 2015-03-02 17:09:54
notebook Home 戻る  過去 未来